共同研究プロジェクト
国立研究開発法人
建築研究所
材料研究グループ
宮内博之
上席研究員
学校法人
東京理科大学
創域理工学部 建築学科
兼松学 教授
西武建設
株式会社
技術開発部
二村憲太郎
古藤憲
本共同研究は、この3者によるものである。
目標
我々は、本共同研究を通じて、 ドローンによる点検・調査や補修工事などの建設作業を実現し、 建設業における様々な課題の解決を目指します。
目的
本共同研究では、 建築物の外壁面等で接触作業可能なドローンを開発し、 ドローン上で一連の建設作業を実施する技術の確立を目的とします。
課題
建設業全体では、
- 建設業従事者の高齢化による人材不足
- 建設業従事者の作業時の労働災害
建築物の健全性診断と長寿命化、
インフラ設備の老朽化に伴う点検、調査業務では、
- 維持管理技術の確立
- 点検、調査の業務の効率化
- 点検、調査費用の低減と工期の短縮
これらの課題の解決方法としてドローンの活用が期待されている。
ドローンの実装
近年、ドローンに対する建築基準法や航空法の法整備が行われたことで、建設業界でもドローンの実装が進んでいる。日本国内のドローンビジネスの市場規模調査における、2024年度の金額は、2,600億円弱※1に達すると見込まれている。その内50%以上は、土木、建築と点検分野で利用されている。2028年度の市場規模の予測における、ドローンビジネス全体の金額は、5,000億円に達し、土木、建築と点検分野では、2,500億円に達すると予測されている。
※1インプレス総合研究所、ドローンビジネス調査報告書2024より

現状
建築分野
- ドローンに搭載された可視カメラや赤外線装置による建築物の点検・調査
- 俯瞰的な撮影による施工写真・映像撮影、警備、アーカイブ
土木分野
- ドローンに搭載されたカメラによる橋梁等のインフラ設備の点検・調査
- ドローンを使用した空中写真、レーザー測量
などにドローンが使用され、上記のような建設DXが取り組まれている。 これらドローンを使用した作業は、対象物に対して非接触によるものとなっており、対象物にドローンを接触させ作業することについては研究・開発段階である。
研究開発による効果
将来、ドローンを建築物外壁面等へ接触させて高所での作業や、有資格の調査者による遠隔臨場(現場から離れた場所で調査者が確認)が可能となることで以下の点に有効である。
- 高所作業で必要となる足場等の仮設費用の削減と工期の短縮を図る。
- 高所作業による作業員の墜落の危険性を低減することが可能である。
- 仮設備が設置できない場所や高所作業車が適用できない場所での新たな作業手段になる。
- 作業員が危険にさらされる、倒壊の危険性がある構造物等への新たな作業手段になる。
- 調査者や作業員の現場へ移動する時間を削減する事で、業務の効率化を図る。
以上により、建設作業の効率化や作業の安全確保が見込める。
研究開発の状況
2024年現在、ドローンをコンクリート外壁に接触させ、ドリル法によるコンクリート外壁の中性化深さ(コンクリートの健全性をはかる指標のひとつ)の測定を可能とした。施工時のコンクリートはアルカリ性であるが、経年に伴いコンクリートの中性化が進行する。水分や酸素の供給がある箇所でコンクリートの中性化が内部の鉄筋まで及ぶと、鉄筋に錆が生じ膨張する。 それらが原因でコンクリートのひび割れ、剥離が発生する。 そのためコンクリートの健全性を評価する指標として、中性化深さの測定が行われる。
2024年現在のドローンで可能となる作業
- コンクリート外壁のドリル削孔
削孔ドリル用ビット:径10mm、削孔深さ50mm ダイヤモンドコアビット:径25mm、削孔深さ30mm、採取コア直径20mm程度 - 微破壊削孔を用いたコンクリートの中性化測定
今後について
ドローンを構造物に接触し、下記のような様々な作業を可能とするドローンの研究、開発を進める。
- 構造物の非破壊と微破壊や破壊を伴う点検、調査
- ドローンへの新たなセンサーの搭載技術
- 高精度な位置決めや連携動作の強化技術


建設業が抱える課題を解決するため、
壁面接触型作業ドローンの社会実装を目指し、研究開発を推進する。

本件の連絡先
西武建設株式会社 技術開発部
ドローン担当 古藤憲
k-kotou@seibu-const.co.jp